韓国マザーズバスケットボール会
―― その創立経緯と現状並びに今後の課題 ――


韓国マザーズバスケットボール会
会長 金 良植

(2001年大阪にて開催された第1回アジア女性スポーツ会議における発表より)


1.経緯

韓国マザーズバスケットボール会(Korean Mothers Basketball Association.)は、1981年8月、韓国女性篭球の先駆者尹徳珠(初代会長)女史が、かつて学校で、又は職場で活躍していた選手達に声をかけ、全国的なひとつのまとまった団体として誕生させました。

 その設立目的は、すべての会員同志の親睦を図り、再び戻ってきたコートでの訓練を通して心身を鍛練し、もって女子篭球発展に寄与することでした。このような目的のもと、1981年8月、18の学校OGチームと一つの連合チームにより創立記念バスケットボール大会を催してから、今年でちょうど創立20周年目を迎え、その記念兼第21回全国マザーズバスケットボール大会を、去る4月28日から30日まで3日間にわたりソウルの蠶室学生体育館にて成功裡に終えることが出来ました。

 今日に到るまでの20年間、韓国から遅れること1年して活動を開始した日本の家庭婦人バスケットボールとは、お互いに隔年で招請し合う価値ある美しい交流を続けてきました。一時は台湾も加えて3国間にてゲームを行い、お互いに現役選手時代を回想しながら新たな友情を確かめ合いました。その後、1995年の阪神淡路大震災の時や、1997年韓国での経済危機の時などは、お互いの理解の下で親善訪問ゲームを中止していました。こうして約3年間の空白期間を経て、昨年4月にはソウルで韓・中・日3カ国の素晴らしいママバスケットボール大会が催されました。この大会が成功だったと言えるのは、初めて参加してくれた北京ママバスケットボールの選手の皆さんが、韓・日の選手の皆さんと共に国境や理念そして年齢を超えたスポーツ人としての純粋な心と心の温かいふれあいがあったからでした。


2.現状

韓国マザーズバスケットボール会は皆がかつての高校、大学、企業のトップ選手出身であって、まだ市民中心のアマチュアレベルのチームはありません。この点は日本と大変異なっています。市民スポーツレベルのチームが誕生できないのは生活スポーツ拡大運動が十分なされていない証拠だと考えています。それはやはり政府機関とか、どこかの財団の積極的な支援金が全くないということです。ただ、会員がそれぞれ年会費を出しており、又、大会を催す際はバスケットボールと関係のある協会や個人的な祝儀金から、多くの経費をカバーしています。韓国とは違って日本のママさんは日本バスケットボール協会の傘下団体として競技運営も手伝ってもらえ幸せだと思います。私達の団体は未だひとつの小規模な親睦団体であると言えるでしょう。即ちひとつの独立したスポーツ団として、家庭では忠実な主婦として、又、子供たちの賢明で美しい母としてベストをつくしている一方、余暇を利用して心身を共に修練して健全な一市民として生活体育発展のために寄与しています。また、自分たちの母校で活躍している後輩選手たちを訪問激励し、時には奨学金を与えたりしています。これは母校のバスケットボール選手養成に力を入れていると考えられます。

 しかし昨今、中・高等学校のトップレベルのバスケットボールチームが減ってきているという現実が、重要な問題になっています。その原因は、やはり父母達が勉強を重んじてあまり運動はさせたがらないにことにあります。それはもちろん高校とか大学の進学が難しくなっているからでしょう。今日、韓国において小学校女子バスケットボールは23チーム、女子中学校は23チーム、女子高校が26チームに過ぎないのです。そして女子大学の方は7チームですから、ほんとにやっと女子バスケットボールの命脈が続けられているというところです。

 それはやはり他の運動競技よりかはるかに強烈なるがゆえに、そして高度のテクニックを要するがゆえに、その人口が減っていくのではないかと思われます。この点で女子テニスとか、バレーボールそして卓球等とは相当の差異があると言えるでしょう。

 ちょうど4月の中頃、韓国女子庭球連盟主催の第30回全国大会及び韓日親善競技大会が開催され、その開会式に招かれました。そちらでもやはり出場選手の半数以上が中高年層でした。若い人より40代以上が大部分でした。日本側の参加選手6〜7人もまた60歳代だということで、テニスは長寿でもできる競技だと考えられました。

 この点バスケットボール選手等の活動生命は短く相当不利な立場にあります。そこで韓国マザーズバスケットボール会では、制限されていた未婚女性選手の入会を再び考え始めました。特に独身女性の数が多くなるに従ってその年も30代を占めているのが現実です。幸い選手出身の若い独身者たちの中には学校のコーチとか、トレーナー、又は専門的な審判や記録員として、バスケットボールとの関係を維持しながら生活を支えている女性の数も増えてきています。このような活発な参加は本当に歓迎すべきことです。

 その他の若いママさん達も何かと職を持ったり、副業に携わっているために練習場に出てくるのもたやすいことではないのです。いくら機械化された生活の中でも、家庭や職場を持っている主婦達には余暇を利用した社会又は生活スポーツへの参加は未だ難しいところです。私達が4月に行った全国大会を前にした練習場では、年配の先輩達が若い選手達が連れてきた赤ちゃんを抱いたりおんぶしたりして子守り役をつとめていました。又、3,4歳の子供たちも、お母さんを探してゲーム中のコートに走り寄ったりして危ないので、年配者たちが遊び相手をしてあげねばなりません。

 話は前に戻りますが、30歳以上の未婚女性選手の仲間入りを認めるべきだという議論についてです。この課題は韓日両国のママバスケットボール当事者達が一緒になって解決すべき問題だと思います。それは、昨年ソウルで行われた韓・中・日親善大会に初めて参加した北京ママバスケットボール会のチームメンバー構成に、やはり30歳以上の独身選手が含まれていたからです。独身女性の人口増加は自然的な、又、時代的な傾向ではないでしょうか。この問題はお互いに相談して30歳以上かそれとも33歳又は35歳以上かを決めなければと考えています。

 又、ますます高齢化していく社会において篭球人の問題も難しいことです。可能であれば充分な基金を蓄え高齢会員を支援する一方、青少年女子選手の発掘に力を注ぎたいと希望しています。従って青少年女子バスケットボールの活性化とその発展に、マザーズバスケットボール会会員達で各々寄付をしてもらいたいと望んでいます。

 今年の7月横浜で開催される第20回日本家庭婦人バスケットボール全国大会に招かれ、韓国のママさんチームが参加できることを嬉しく思っています。この20年の間、韓日の親善競技を通して両国会員たちの友情もその深さを増してきました。今回もきっと楽しくそして美しい再開のゲームになることと信じています。来年はソウルで、また新たな韓日親善ゲームを行い、再度中国ママさんチームも招き、お互いに各々異なる生活文化又は情緒等、暖かい交流が行われれば素敵ではないでしょうか。


3.韓国における中高年女性スポーツ参予の現状

韓国マザーズバスケットボール会と同じくかつての選手が中心になって創立された球技の代表3団体の活動状況を簡単に紹介します


3.1 韓国女子庭球連盟

 1971年元老庭球選手呉英淑(現93歳)女史によって創立、今年で30年を迎えています。その30回目の全国大会及び韓日親善ゲームが去る4月17日〜18日に行われました。

 会員数は約1200人で、選手出身が35%、アマチュア選手が65%を占めています。会費は特別に決めてないが毎大会時には各人参加費を出しています。大会諸費用はこれ以外に会長団と会員達の寄付金、そして祝儀金等で補っています。日本チームとは毎年定期的に交流をもっていますが、時々台湾とも交流が行われています。現新任会長の金泳姫女史は次のように言っていました。「もし可能であれば北朝鮮とも、中国とも、交流ができればもっ嬉しいでしょう。そしてどこかの財団から少しのサポートがあれば、もっと活発に生活体育の参加が進められると思います」と。


3.2 全国マザーズバレーボール連合会(9人制)

バスケットボールと同じく1971年に創立し、生活体育としての9人制ゲームを基本としています。他の?盟あるいは?合会よりもかなり活発な発展をしてきています。全国の会員数は2,000名くらいで、大会時は市・道(県)別に予選を行い、最終的に40〜50チームが全国大会に参加することになります。

 全会員の30%が選手出身で70%がアマチュア選手だとのことでした。バレーボールの場合は、各地域においてその底辺拡大が素晴らしく展開されている実態が認められました。そのお陰でなのか、大会時にはその都度スポンサーがついて、大会時の費用をまかなっているという話でした。


3.3 韓国ママ卓球大会

このスポーツ団は別に連盟とか協会といった団体ではないが、歴代のオリンピック大会でメダルを得た国家代表選手たちが国民の声援に応え、社会生活スポーツの普及並びに指導、そして健康な社会の一員として明朗な市民生活への導きに力を貸し、後輩選手の技量を充分発揮させるように働きかけるため、1981年4月《韓国女性スポーツ会》を創立しました。会には女性スポーツ19種目が揃っており、卓球もその1種目であります。

特に生活スポーツとして多くの市民の興味を喚起し、その結果アマチュア選手が続出しています。この女性スポーツ会は年間を通して色々な種目の大会を主管し、正しいスポーツの生活化と秩序等を指導しています。去る2月に日本で全日本レディス卓球祝祭が行われた際は、韓国ママ卓球チームが参加しており、来る10月には日本チームを招きソウルで韓日親善大会を行うことになっています。このような活動を通して日本の運営方針やその長所を見習い、勉強する機会としています。そして又、卓球同好人のための底辺拡大を目ざしているとのことです。運営資金は文観部、大韓体育会、国民体育振興公団、国民生活体育協議会から援助を受けています。

その他、国民体育振興公団、国民生活体育協議会等政府次元の運営機関が設置されて国民のスポーツを通しての健康を指導しています。全国的にスポーツ教室等を開催したり、地域体育館を開放したりして、数多くの市民が参加できるように働きかけています。そのようなプログラムは老若男女が対象になっています。